2022/11/01
金は酸化されない!金製品の黒ずみや放射能汚染との関係も解説
金の現物を資産として持つときには、金地金や金貨の価値が下がることが不安になる方もいるでしょう。自分が保有している金が酸化されてしまったら無価値になるのではないかという心配がよくあります。
しかし、結論としては、金は安定な金属なので酸化されることはありません。ただ、実際には金のアクセサリーが黒ずんでしまったという経験がある人もいるのではないでしょうか。
この記事では金の酸化について詳しく解説します。金が安定で安全な資産なのかどうかをぜひ考えてみてください。
金は酸化されない
金は酸化されない金属として知られています。化学的に考えたときに金だけでなくプラチナや銀も安定性が高くて空気中では酸化されません。
銅や鉄、アルミニウムやスズなどは空気中でだんだんと酸化されていきますが、何が違うのでしょうか。
ここでは金属が空気中で酸化される原理を解説した上で、金が酸化されない理由を詳しく説明します。
金属が酸化される原理
金属が酸化されるのは空気中の酸素と反応するからです。化学的には酸化還元反応と言われる反応で、酸素が金属原子から電子を奪うことによって起こります。
金属原子は負の電荷を持っている電子を酸素に奪われた時点で陽イオンになります。そして、最終的には酸素に由来する酸化物イオンと結合して金属酸化物になるというのが原理です。
金属と酸素から酸化物ができるプロセスの中で、最も大きな障壁になるのが最初の酸化還元反応です。そのため、金属が酸化されやすい性質を持っているほど、空気中で容易に酸化物を形成することになります。
金属の酸化されやすさは、言い換えると電子を奪われて陽イオンになりやすい性質があることを指します。電子を切り離してイオンにするのに必要なエネルギーが小さければ、酸素が容易に電子を奪えるからです。
金属の陽イオンになりやすい傾向の指標とされているのがイオン化傾向です。身近にある金属のイオン化傾向は以下のようになっています。
金属のイオン化傾向
K(カリウム) | > | Ca(カルシウム) | > | Na(ナトリウム) | > | Mg(マグネシウム) | > | Al(アルミニウム) | > |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Zn(亜鉛) | > | Fe(鉄) | > | Ni(ニッケル) | > | >Sn(スズ) | > | Pb(鉛) | > |
Cu(銅) | > | Hg(水銀) | > | Ag(銀) | > | Pt(プラチナ) | > | Au(金) |
イオン化傾向が小さいほど電子を奪われにくく、酸素との反応によって酸化されにくいと言えます。
金属の腐食と酸化被膜
イオン化傾向を見たときに鉄の錆びや腐食について疑問が出てきた人もいるでしょう。鉄は錆びたまま放置しているとだんだんと腐食が進んでしまいます。
しかし、身近にあるアルミ箔はもっとイオン化傾向が大きくて酸化されやすいのに腐食されているのを見たことがない人が多いでしょう。
亜鉛やスズはメッキとして鉄製品の保護に使われることがよくありますが、どちらも空気中で酸化される金属です。なぜアルミニウムや亜鉛、スズなどの金属は腐食されないのでしょうか。
実は酸化されやすい金属は表面だけ均一に酸化されています。
酸化被膜と呼ばれる金属酸化物の膜状構造によって金属全体が覆われている状態です。
均一な酸化被膜は不動態被膜と呼ばれる電子の授受を起こす酸化還元反応の障壁として機能するため、内部まで酸化されずに安定性を保っています。
しかし、表面に凹凸があって酸化被膜が均一に形成されない場合には不動態被膜にならず、内部まで酸化されて腐食されてしまいます。アルミ箔やメッキは表面を均一に仕上げているため、内部の腐食を防ぐことができているのです。
金が酸化されない理由
金が酸化されないのはイオン化傾向が低く、そもそも空気中の酸素くらいでは電子を奪えないからです。
アルミニウムや亜鉛などとは違って、酸化被膜を形成してバリアを作っているわけではありません。
そのため、表面に凹凸があったとしても錆びることはなく、腐食するリスクもありません。酸化に対しては極めて安定な金属なので、金は安心して保有できます。
金のアクセサリーは変色するのはなぜ?
金が酸化されないのなら、なぜ金のアクセサリーなどの金製品が黒ずんでしまう場合があるのかが疑問になるでしょう。
金製品は長く使用していると変色することがあります。ここでは金製品が変色する理由と、変色した際の手入れの方法を紹介します。
金に混ぜている他の金属が酸化されているから
金製品が黒ずむ原因は他の金属を混ぜているからです。アクセサリーや腕時計などには精巧なデザインが施されているでしょう。
金は純度が高いほど加工が難しいため、少し他の金属を混ぜて合金にすることにより強度を高めています。
金の純度 | 金の含有率 |
---|---|
K24・24金 | 純金99.99%~100% |
K22・22金 | 純金91.7%:混合物8.3% |
K18・18金 | 純金75%:混合物25% |
K14・14金 | 純金58.5%:混合物41.5% |
K10・10金 | 純金42%:混合物58% |
装飾品の場合には普段から身につけるので、傷つきにくく、変形しにくいことも重要です。
金の純度が高いと軟らかくなるため、落としたりぶつけたりしたときに変形するリスクがあります。加工性と実用性を考慮して他の金属を混ぜるのが常套手段になっています。
金との合金にしたとしても、他の金属の部分だけは酸化されます。金の含有量が低いほど酸化による変色が目立ちやすくなります。
皮脂や汚れが付着しているから
K18のように高純度の金でも他の金属がわずかに含まれているので変色することもありますが、実際には別の原因のこともあります。
皮脂によって表面に汚れが付着しやすくなり、ほこりやカビなどの付着によって黒くなってしまうのもよくあることです。必ずしも酸化によって変色するわけではないので注意しましょう。
変色した金製品の手入れの仕方
変色してしまった金製品はちょっとした手入れをするだけできれいになります。
原因に応じて以下の手入れ方法を試してみてください。
中性洗剤や重曹で洗う
皮脂やほこり、カビなどの付着による汚れは中性洗剤で洗うのが効果的です。
柔らかいスポンジで軽くこするようにして中性洗剤で洗えば皮脂と一緒にほこりやカビなどもきれいに洗い流せます。
もしべたついている、臭いがするという状態なら重曹で洗うと良いでしょう。薄めの重曹水に少し浸して洗い流すだけで皮脂はほとんど落とせます。
最後に水洗いをして重曹を落とせばきれいになります。
レモン汁やお酢で洗う
金製品に使用されている他の金属が酸化されている場合には金属の酸化物を溶かし出すのが効果的です。
レモン汁か薄めたお酢に浸して黒ずみを落としましょう。最後に水で十分に洗い流せばきれいになります。
レモン汁やお酢に含まれている酸が残っていると酸化されやすいので、一度、重曹水で洗ってから水で流すとより良いでしょう。
貴金属用の布で磨く
貴金属用に販売されている繊細な布で磨くのも効果的です。
金のアクセサリーの場合には宝石などが付いていることも多く、レモン汁などに浸して長く放置していると外れてしまうリスクがあります。
金製品に含まれている他の金属の量はわずかなので、表面に出てきた変色部分だけ磨き落とせばきれいになります。
やさしくなでるようにして磨くと美しい輝きを取り戻してくれるでしょう。
金は放射能汚染によって無価値になる?
金は酸化されない金属なので、空気中に置いておいても価値が損なわれることはありません。
しかし、放射能汚染によって金が無価値になるという噂を聞いたことがある人もいるでしょう。金は放射能汚染による影響を受けて、価値がなくなることがあるのでしょうか。
金と放射能汚染についてのゴルゴ13の有名な話
金が放射能汚染によって無価値になるというのはゴルゴ13で取り上げられたことで有名になりました。
ゴルゴ13の第180話「穀物戦争 蟷螂の斧 汚れた金(ポリューテッド・ゴールド)」では放射能汚染された金が無価値になるという話が挙げられていて、金相場が大暴落を起こしています。
金塊の輸送中に核爆発と思われる煙に包まれて放射能汚染が起こったというニュースによって金相場が暴落しました。
このゴルゴ13の有名な話が事実なら、原子力発電所で事故が起きたり、戦争やテロによって核爆弾が使用されたりしたときには金が無価値になるリスクがあります。
漫画の中の話なので信憑性が気になるでしょう。
金は放射線によって純度が下がるリスクがある
金は放射能汚染によって純度が下がる可能性がゼロではありません。金は酸化還元反応などの化学的な性質としては極めて安定です。しかし、物理学的には変化し得る金属だからです。
金は197Auと呼ばれる安定同位体が大半を占めていますが、放射性同位体と言われる放射能を持つ同位体が18種類存在します。
半減期が短い同位体が多く、もし安定同位体の197Auが放射性同位体に物理学的な手法で変換されてしまったら、核分裂を起こして金ではなくなってしまいます。
同位体 | 半減期 | 破壊形式 |
---|---|---|
196Au | 6.183日 | β-壊変 |
197mAu | 7.73秒 | 核異性体転移 |
198Au | 2.69517日 | β-壊変 |
199Au | 3.139日 | β-壊変 |
核爆弾などによって強力な放射線を浴びることによって、金は放射性同位体になる場合があります。例えば、放射線の一種である中性子線を照射すると、197Auは198Auになります。
198Auは半減期が2.7日くらいの放射性同位体です。核分裂を起こすときにはガンマ線が放出されるので、数日間は放射能のある金になってしまいます。
中性子線を大量に照射したとしても金地金がまるごと金ではなくなるようなことはありません。
ただ、核攻撃を受けて放射性物質が金地金を覆ったまま、ずっと放置していたら純度が低下して価値が下がるリスクはゼロではないでしょう。
金の現物の価値が下がってしまう数少ないケースです。
金を資産として保有するときのポイント
金は化学的には極めて安定なので酸化されて価値が下がる心配はありません。
金を資産として保有すると安全で価値が下がることがないと言われているのは、金そのものの安定性が高いのが理由の一つです。貨幣とは違って金融政策などによる価値変動もないので、資産価値の安定性も極めて高いのが特徴です。
ただ、金を資産として保有するときには注意した方が良いポイントもあることがわかったのではないでしょうか。最後に金を保有する際に押さえておくべきポイントを紹介します。
放射能汚染のリスクが低いところに保管する
金は中性子線によって変化するリスクがあるのは事実です。福島県の原子力発電所で事故が起きたのは記憶に真新しい人も多いでしょう。
旧ソ連でのチェルノブイリ原発事故も歴史的には大きな事故で、大量の放射性物質が拡散しました。原子力発電所が今後どうなるかは不透明ではあるものの、代替エネルギーによる発電が十分におこなわれるようにならない限りは稼働せざるを得ない状況が続きます。
また、核兵器断絶が唱えられているとはいえ、各国での核兵器の保有や開発は続けられています。このような時勢を考慮すると、金が放射線にさらされるリスクがあるのは事実です。
放射能汚染を避けるためには少しでも放射線を受けるリスクが低い場所に保管するのが大切です。
金の現物を保管するときには鉛などの重金属を使用している金庫に保管しましょう。
重金属は放射線のバリアとしての役割を果たします。放射性物質が漏洩して中性子線が当たるリスクがあったとしても、金庫の壁で遮断されるので金は無事で済みます。
1 H | 2 He | ||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3 Li | 4 Be | 5 B | 6 C | 7 N | 8 O | 9 F | 10 Ne | ||||||||||
11 Na | 12 Mg | 13 Al | 14 Si | 15 P | 16 S | 17 Cl | 18 Ar | ||||||||||
19 K | 20 Ca | 21 Sc | 22 Ti | 23 V | 24 Cr | 25 Mn | 26 Fe | 27 Co | 28 Ni | 29 Cu | 30 Zn | 31 Ga | 32 Ge | 33 As | 34 Se | 35 Br | 36 Kr |
37 Rb | 38 Sr | 39 Y | 40 Zr | 41 Nb | 42 Mo | 43 Tc | 44 Ru | 45 Rh | 46 Pd | 47 Ag | 48 Cd | 49 In | 50 Sn | 51 Sb | 52 Te | 53 I | 54 Xe |
55 Cs | 56 Ba | ・・・ | 72 Hf | 73 Ta | 74 W | 75 Re | 76 Os | 77 Ir | 78 Pt | 79 Au | 80 Hg | 81 Tl | 82 Pb | 83 Bi | 84 Po | 85 At | 86 Rn |
※背景色が「水色」のものが「重金属」に該当します。
自宅で保管するときには飾りたいという気持ちがあるかもしれませんが、価値を損なわないためには金庫に入れるのがおすすめです。
安全性の高いところに保管する
金は酸化による価値の低下がなく、放射能汚染についても金庫に保管すれば問題がありません。金は現物として持っていても価値が下がることはないと考えられます。
ただ、金を資産として保有する際には安全性についてもう少し深く考えた方が良いでしょう。金は安定資産としての高い価値があるので、盗難されるリスクがあります。
自宅で金庫に入れて保管していたとしても、金庫破りをされたり、金庫ごと持ち去られたりしてしまう可能性があります。盗難リスクも低いところに保管するのがより安全です。
金の現物を取り扱っている業者に預かってもらうのが最も安心です。
金の現物を手元に置くのにこだわらないなら、金を受け取る必要なく金の現物資産を保有できるサービスを利用しましょう。
盗難リスクも放射能汚染リスクもない金庫で管理をしているサービスを選べば、金はずっと安心できる資産になります。
まとめ
金は鉄や銅、アルミニウムや亜鉛などの身近な金属とは違って酸化されません。イオン化傾向が低いので空気中の酸素と酸化還元反応を起こさないからです。
アルミ箔やメッキとは違って酸化被膜によって守られているわけではなく、金そのものが酸化されないので錆びや腐食のリスクはありません。空気中で放置しておいても酸化によって価値が下がることがない安定資産です。
ただ、金は放射能汚染によって純度が下がる可能性がゼロではありません。放射線を被ばくしないように重金属を使用している金庫に保管した方が安心でしょう。
金の現物を取り扱っているサービスなら、盗難リスクも低くて安心できる形で保管してもらえます。金の資産を守るために金現物取引の保管サービスを活用しましょう。
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