2024/06/21
フードテック投資とは?日本の取り組みと投資リスクを解説
フードテックはサステナビリティにかかわる重要な技術です。話題になっているので、フードテック投資をしたら資産形成になるのではないかと思っている人もいるでしょう。
この記事では資産形成という観点からフードテック投資について解説します。フードテック投資はリスクもあるので、どのように投資していくのが良いかを考えてみましょう。
目次
フードテック投資とは
フードテック投資とはフードテックにかかわる事業を進めている企業への投資です。株式投資や債券投資が中心ですが、スタートアップ企業への投資ではクラウドファンディングもおこなわれています。
フードテックとは
フードテックとは「食」にかかわる課題を解決するテクノロジーです。フィンテックでは金融、アグリテックでは農業や畜産などをテーマとして新しい技術による課題解決を目指して開発が進められています。
フードテックに取り組む企業では食べ物の生産、流通、調理、保存などのさまざまな観点から新しい技術を生み出しています。
フードテックの重要性
フードテックが投資でも注目されているのは重要性が高まっている社会背景があるからです。
世界的な人口増加によって食料危機が起こっています。飢餓に苦しむ人が多い中で、どのように食料を有効活用していくかを考えてシステムを整えることが重要課題です。
日本でも食料自給率が低く、海外からの輸入に頼っている状況があります。SDGs(Sustainable Development Goals)でも貧困や飢餓をなくすことが目標として挙げられています。
フードテックによって誰もが食生活に対して安心できるようにすることが求められているのが現状です。
フードテック投資の状況
フードテック分野では世界的に投資に積極的な状況が続いてきました。国によるフードテック投資は年々伸びてきています。
2012年には31億ドルだったフードテック投資額は、2021年にはピークを迎えて532億ドルに到達しています。
2021年は新型コロナウイルスの感染拡大により、デリバリーなどのサービスに対する投資が活発化したという背景がありました。
2022年でも296億ドルのフードテック投資がおこなわれていて、2020年の277億ドルよりも高く、年々投資額が増加している様子があります。
フードテック投資に関する日本の取り組み
フードテック投資について日本ではどのような取り組みが進められているのでしょうか。
国による支援事業の実施
国ではフードテックに関連する予算を確保して支援事業を推進しています。
フードテックビジネス支援事業、フードテックビジネス実証事業、スタートアップへの総合的支援などのさまざまな目的の事業がおこなわれてきました。
フードテックのビジネスを始めるケースだけでなく、基礎研究を始めるケースでも投資支援を受けられるようになっています。
フードテックビジネスコンテストの開催
「未来を創る!フードテックビジネスコンテスト」が令和5年度に開催されました。フードテックビジネスコンテストはテクノロジーで食にイノベーションを生み出すためのアイデアとビジネスの募集をした一大イベントです。
農林水産省による主催で開催され、最優秀賞としてビジネス部門では株式会社エンドファイトの「プラットフォーム微生物“DSE”によりあらゆる環境で植物の生育を実現する」、アイデア部門では株式会社プラントフォームの「“棚田ポニックス”(循環型施設園芸)低投資、高収益、脱炭素型食料供給システムの実現」が選ばれました。
日本で生まれているフードテックのビジネスとアイデアを広める舞台として大きな役割を果たしたイベントです。
株式会社フードテックワンの設立
フードテック投資の取り組みは民間企業でもおこなわれています。株式会社フードテックワンが双日と双日食料を中心として、松屋フーズ、デリカフーズ、丸大食品などの合計12社が共同して生まれました。
菜食の需要、たんぱく質危機などの課題を捉えて、フードテックの共同開発をしています。
各社が協力して投資することで開始された「食」の社会課題を解決する取り組みです。
フードテック投資のリスク
フードテックは国も企業も投資を進めています。食料問題の解決にテクノロジーを活用するのは近年のIT関連の技術発展を考えると合理的でしょう。
ただ、個人がフードテックに投資するときにはリスクを伴うので注意が必要です。
フードテックは実現が難しい
フードテックの開発をしている企業に投資すれば、企業が成長した暁には利益を得られると考えられるでしょう。ただ、技術開発は成功確率が高いわけではありません。
フードテックは特にビジネスとして開発を始めたとしても、利益を得られずに失敗するリスクが高いのが注意点です。
例えば、食品ロスをなくすテクノロジーを開発すれば食品の無駄を減らせるので大きな社会貢献になるでしょう。
ただ、画期的なフードテックを生み出したとしても、売れなければビジネスは成立しません。魅力を理解できずに導入を断られる場合もあります。
フードテックは開発に成功しても、社会に根ざすテクノロジーになるための敷居が高いのが問題です。投資をして技術開発に成功しても、使われなくて利益にならないリスクがあります。
フードテックの導入が難しい中小企業が多い
フードテック投資をして新しいテクノロジーが開発されたとしても、食品業界の企業にとって費用的に受け入れられないこともあります。
新しいフードテックを導入するには初期コストもランニングコストもかかります。食品製造では利益率を最小限にして、消費者に安く食品を届けられるようにしているのが一般的です。
フードテックの導入によって社会課題の解決に貢献できるとしても、赤字になってしまっては企業が倒産に向かいます。
開発費用がかかっているのでフードテックは高額のことが多く、導入が難しい中小企業が多いのが実情です。
フードテックの開発企業に投資をしても、事業成績が伸び悩む場合があります。
資産形成よりも社会貢献の意味合いが強い
フードテック投資は食の課題を解決する社会貢献の意味合いが強くなります。投資した資金によって課題解決になるテクノロジーが生まれたとしても、必ずしもリターンが大きいとは限らないからです。
株式投資ではフードテックの開発によって株価が上がれば利益になります。しかし、開発したフードテックが売れなければ株価は下がります。
いかに優れたテクノロジーだったとしても、ビジネスで優位性を確保できなければ投資家は他に資産を移すのが一般的だからです。そのため、根強くフードテック企業に投資をすると、資産が目減りするリスクがあります。
フードテック投資でも資産形成になる可能性がゼロというわけではありませんが、資産が減るリスクもあることは念頭に置いておく必要があります。
まとめ
フードテック投資は食料問題を解決できるテクノロジーを生み出すために貢献できる投資です。新しいテクノロジーの開発に貢献できるメリットがあります。
ただ、フードテックの導入や運用にはコストがかかるため、少ない利益で経営している中小企業にとっては導入が困難です。フードテック投資をするときには、利益を得るよりも社会貢献の意味合いが強くなるので注意しましょう。
安定した資産形成になる投資をしながら、一部の資産をフードテックに振り分けるのがおすすめです。金は安定して価値が伸びている資産なので、フードテック投資と合わせて金投資を検討してみましょう。
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