2024/10/24
金融所得課税とは?強化されたときの投資のポイント
金融所得課税とは金融商品による所得にかかる税金です。
過去にも金融所得課税制度の変更を巡って議論が起きてきましたが、2024年にも自由民主党総裁選で話題に上がりました。金融所得課税の強化に関する推進・反対の議論は自民党では頻繁に発生しています。
この記事では日本の金融所得課税の基本と、強化されたときの影響をまとめました。世界的な状況も踏まえると、今後に日本の金融所得課税が変わる可能性があります。ここでは金融所得課税が強化された場合を想定して、投資でのポイントも解説します。
目次
金融所得課税とは
預金、株式投資、投資信託などの金融商取引によって発生する利子、配当、譲渡所得などにかかる所得税です。
日本では所得税法によって給与所得、配当所得、利子所得、一時所得、雑所得などの10種類の所得が定められています。金融所得課税は単純に所得税の税分類に直接帰属できるわけではなく、一般的には内容によって課税方法が変わります。
日本の金融所得課税の基本
日本では金融所得課税制度で株式投資や投資信託などの金融商取引によって得た所得にかかる税金は一律で20.315%になっています。所得税が15%、住民税が5%、復興特別所得税が0.315%です。
例えば、株式の売買によって年間に100万円を手に入れたときには、合計で20,315円を納めなければなりません。銀行の預金から得られる利子所得も同様に20.315%が課税されます。
個人所得課税との違い
個人所得課税
個人所得課税は所得税法に基づいて総合課税と分離課税によって課税されます。
日本では給与所得、事業所得、不動産所得、譲渡所得などの所得は総合課税の対象です。税率は10%~55.9%で、所得の合計額が大きいほど税率が高くなる仕組みです。
所得の合計額に対して税率と控除額が変わる累進課税制度になっています。
金融所得課税
金融所得課税では金融商取引の内容や規模による選択によっては、利益額によらずに税率が20.315%になります。
日本の金融所得課税の仕組み
日本の金融所得課税は3つの課税方法に分けられます。ここでは金融所得課税で適用されている源泉分離課税、申告分離課税、総合課税について解説します。
源泉分離課税
銀行預金や公社債などによる利息を得たときに対象となる利子所得の課税方法です。
公社債投資信託や合同運用信託、運用投資信託の収益の分配も利子所得になり、源泉分離課税が適用されます。源泉分離課税は他の所得と分離して、その所得に対して一律の税率で税金を課す仕組みです。銀行預金や債券による利息収入による所得には20.315%の税率で税金がかかります。
利息の支払いのときに源泉徴収され、支払元が税金を納めるため、源泉分離課税の場合には確定申告が必要ありません。
申告分離課税
特定の理由で発生した所得について、他の所得とは合わせずに単独で税額を計算する課税の仕組みです。
確定申告のときに他の所得と分離して税額を計算するので申告分離課税と呼ばれています。株式や債券などの売買による譲渡益は申告分離課税で、20.315%の税金が課されます。
総合課税
給与所得や事業所得などの該当する所得と合計した金額に対して、累進課税制度によって税額が決まる課税方法です。
株式投資の配当金や投資信託の分配金などの配当課税は、総合課税または申告分離課税を選択できます。総合課税の場合には給与所得などの総合課税になる所得の合計額によって10%~55.9%の税率になります。
所得が少ない人の場合には総合課税を選ぶと税額を抑えられる可能性があります。
確定申告の必要性
確定申告は申告分離課税の場合には口座の種類によって必要性が異なります。口座の種類は以下の3種類に分けられます。
口座の種類 | 確定申告 |
---|---|
特定口座(源泉徴収あり) | 必要ではない |
特定口座(源泉徴収なし) | 必要 |
一般口座 | 必要 |
源泉徴収されない特定口座および一般口座では確定申告が必要です。源泉徴収される特定口座では確定申告は義務ではありません。他の目的で必要がある際には確定申告をしましょう。
海外における金融所得課税との違い
日本の金融所得課税の強化の是非を巡る議論が進んでいると、海外ではどうなのかが気になる人も多いでしょう。海外では金融所得課税のあり方がまったく異なります。
例えば、米国では州ごとに税制が異なるため、総合課税や分離課税の適用方法や税率が異なります。英国では利子課税、配当課税、譲渡益課税が分離課税になっていますが、段階式課税で所得が増えると税率が上がる仕組みになっています。
しかし、ドイツでは一律で申告不要の分離課税です。ただ、ドイツの税率は日本よりも高く、26.4%になっています。フランスでは分離課税と総合課税が選択可能で、分離課税の場合には30%、総合課税の場合には17.2%~62.2%の税率です。
概して海外の先進国では金融所得課税が日本よりも高い傾向があります。
金融所得課税の強化による影響の可能性
金融所得課税は今後も強化される可能性があります。国としては税収を増やして赤字の状況を改善しなければならないのも理由ですが、貧富の格差を狭めるための対策も求められているからです。金融所得課税の強化が実施されたときには、投資のあり方を慎重に検討する必要があります。
ここでは金融所得課税が強化による影響を説明します。
一般的には投資傾向が下がる
金融所得課税が強化されると一般的には投資傾向が下がります。株式投資や投資信託などの金融商取引による投資をしても、利益が税金によって減る割合が大きくなるからです。
金融所得課税の強化のあり方もさまざまですが、例えば、申告分離課税が合計20.315%から25.315%になったとしたら、投資で100万円の所得を得たときに5万円も追加で税金を納めなければならなくなります。税金を抑えて資産形成をする方法を考える傾向が強まるのは明らかです。
高所得者の投資動向が変わる
金融所得課税が強化されると高所得者の投資傾向に変化が生まれます。
高所得者は累進課税制度によって総合課税の所得に大きな税率がかかっていますが、現状では金融所得課税は所得に影響されません。つまり、現状では税金を抑えるには投資に資産を割くのが合理的です。
例えば、金融所得課税が総合課税になると、源泉分離課税や申告分離課税が適用される投資を選んで節税対策をする必要がなくなります。高所得者の投資戦略は金融所得課税のあり方によって大きく変わり、金融商取引の各資産の動向にも影響を与えます。
金融所得課税の強化を見据えた対策
日本では金融所得課税の強化が起こり得る状況があります。金融所得への課税が大きくなり、段階的課税や総合課税が適用されるようになると、大きな資産の運用では税金による支出が問題になるので対策が必要です。
ここでは金融所得課税の強化を見据えてできる対策を紹介します。
NISAを有効活用する
NISAは非課税取引ができるので金融所得課税の強化を見据えて取り組む投資としておすすめです。取引可能な金額に制限があるので少額投資に限られますが、NISAなら現状では金融所得課税制度が変わっても税金がかかりません。
NISA制度も繰り返し見直されているので同じ状況が続くとは限りませんが、現状では株式投資や投資信託をする際には節税メリットが大きい投資方法です。
投資戦略を再考する
金融所得課税が変わったら資産のポートフォリオを検討し直す必要があります。税金も含めて資産を維持・形成できるようにしなければならないからです。今後の課税強化の可能性を見据えて、所得に応じた投資戦略を再考することが大切です。
株式投資や投資信託などの金融商取引は、金融所得課税制度の変化によって大きな影響を受けます。税額が上がる可能性だけでなく、制度の変更に関する情報が流れた時点で多くの投資家が資産を動かし、相場が乱れる可能性もあります。
不安定になりやすい資産を避けて、安全資産を持つことが大切です。
モノは金融所得課税の対象にならないので、このような時勢で重要な資産になります。金は安定した信用があって今後の価値上昇も見込まれているため、今後の投資戦略に盛り込むのがおすすめです。
デジタルゴールドと言うと金相場に連動する金ETFなどをイメージする人もいますが、ビットコインは金とは直接連動することなく取引されているので注意しましょう。
まとめ
金融所得課税が強化されると株式や投資信託による利益が実質的に減ります。累進課税になって税率が高くなると、投資による利益の獲得が難しくなるので注意が必要です。
資産形成では、金融所得課税が強化されたとしても税率の影響を受けない資産も運用するのがおすすめです。
金のように金融所得課税の対象にならないモノとしての資産をポートフォリオに織り込み、税制の変化に対策しましょう。
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