2023/07/21
生成AIの利用ガイドライン策定へ―生活・投資で考えるべきこと
ChatGPTに代表される生成AIの開発が進み、ビジネスでも利用されるようになってきました。ただ、生成AIにリスクを感じている人もいるでしょう。
日本だけでなく海外でも政府が生成AIの利用についてリスクを議論してきました。ChatGPTの登場を受けて、急速に規制を敷く動きが強まっています。生成AIの利用ガイドラインができることはほぼ決まりました。
この記事では生成AIのガイドライン策定に向かっている背景と、それを踏まえて生活や投資で何を考えるべきかを解説します。
目次
生成AIのガイドライン策定の動きが強まる
日本では内閣府でAI戦略チームを設けてAIについての利用や規制についての議論を継続してきました。AI戦略会議も設置して積極的に政府外の有識者を集め、イノベーション政策強化推進をするための会議をおこなっています。
AI戦略会議では初回から生成AIが議題に上がりました。リスクについての話題はその後のAI戦略会議でも毎回議論になっていて、2023年6月26日に開催された第3回の会議では生成AIのガイドライン策定について前向きな意見が交わされています。
生成AIの注意喚起の実施
生成AIのリスクに関する注意喚起は2023年6月2日付で個人情報保護委員会から「生成 AI サービスの利用に関する注意喚起等について」として公表されています。
個人情報保護委員会が取り上げたのは主に個人情報の漏えいやプライバシー侵害のリスクです。重要な項目として挙げられたのは以下の6点です。
- 生成 AI サービスでは入力した個人情報が、生成 AI の機械学習に利用される場合があること
- 入力した個人情報に基づいて関連する内容が出力されるリスクがあること
- サービスに個人情報を入力等する際には、このようなリスクを踏まえた上で適切に判断すること
- 生成 AI サービスでは入力に対する応答に不正確な内容が含まれることがあること
- 不正確な内容の個人情報が含まれるリスクがあるため、生成 AI サービスで個人情報 を取り扱う際にはリスクを踏まえた判断が必要なこと
- 生成 AI サービスを提供する事業者の利用規約やプライバシーポリシーを十分に確認して利用の可否を適切に判断すること
また、個人情報保護委員会では同時に生成AIで有名なChatGPTのサービス提供事業者のOpenAIに注意喚起をしたことも発表しています。
OpenAI に対する注意喚起の内容は、配慮が必要な個人情報の取得についての遵守事項の通達と、個人情報の利用目的の通知です。日本語での通知も要求しているため、OpenAIにとっては対応の敷居が高くなっています。
生成AIのリスクの指摘
内閣府のAI戦略チームでは生成AIのリスクについて指摘しています。2023年6月12日に開催された第7回AI戦略チームの会議では、著作権侵害のリスクについてまとめています。
生成AIによって生み出されたものが著作権を侵害するリスクあることを指摘していて、クリエイターの権利の守り方や生成AIの使い方について議論の必要性があるとまとめています。
また、同会議では警察庁から生成AIが治安上のリスクを発生させることと、その対応の方向性についての警告もありました。AIを犯罪に使用する可能性があるのは確かで、誰もがその被害に遭うリスクを抱えていることを理解しなければならない時代になっています。
年内にも統一のガイドラインの作成を検討
6月26日のAI戦略会議ではAIの普及に対応するために統一のガイドラインを作成することを検討しています。現在では政府では各省庁が独立してAIや生成AIについてのガイドラインを取りまとめている段階です。
村井英樹総理補佐官は各省庁が作成しているガイドラインを統合することで、年内にも一定の取りまとめをする方向性を立てています。
文部科学省では暫定的なガイドラインを公開
文部科学省は省庁の中でも率先してガイドラインの作成に取り組んできました。教育現場における生成AIの利用がもたらす影響は大きいからです。
単純に考えると、宿題の作文を生成AIに作らせてしまうことができます。生成AIに頼ってしまっては人が育たないのは確かでしょう。文部科学省では2023年7月4日に主に対話型の⽂章⽣成AIを対象として「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」を発表しました。
基本的には生成AIは限定的な利用から始めるのが適切とするガイドラインになっています。情報を収集して活用するツールとしての生成AIの利用は今後のAI時代における資質や能力を向上させるのに役立つと考えています。
AIリテラシーの向上の必要性にも言及して、教師がリテラシーを持って教育に携わることが重要という点も盛り込まれています。
G7で広島AIプロセスによる国際ルールの策定へ
先進7カ国(G7)広島サミットの最初の会合の議論は生成AIの内容でした。閣僚級による議論の作業部会「広島AIプロセス」を設置して国際ルールを作成することが議論されました。
そして、各国が合意した枠組みに従ってガイドライン・ルールの策定が進められています。広島AIプロセスの作業部会では7月5日の第2回会議で各国の抱えている課題や生成AIのルール策定について年内に取りまとめる方向性で議論を進めています。
金融でも生成AIの共通指針の策定へ
政府だけでなく企業でも生成AIのガイドラインについての議論が活発になっています。
金融においても、メガバンクや保険会社などの金融大手が加入している金融データ活用推進協会で、生成AIについての金融業界全体としての共通指針を作成しています。
金融機関は機密情報の取り扱いが多いので、上述のように個人情報の情報漏えいなどについてのリスクを抱えていることは否めません。今後の情報管理を中心として生成AIについての規範的なガイドラインが作られる予定です。
生成AIの利用ガイドライン策定を受けて考えるべきこと
生成AIの利用ルールが国際的なレベルで策定され、金融業界でも独自のガイドラインで運用される状況が年内にも到来する状況になっています。生成AIは便利ですが、リスクが高くて脅威だからこそ厳正なルールによる規制が必要なのは確かでしょう。
このような社会の動向を受けて、今後の生活や投資では何を考えたら良いのでしょうか。失敗しないための基本的なポイントを解説します。
生成AIに頼らずに自分の判断を大切にする
生成AIは活かすものであって頼るものではないと考えましょう。簡単に情報調査に使えるという点では生成AIは優れています。
今後、さらに生成AIで生み出せるデータの種類は増えていくでしょう。AI時代になってAIを使わないのは損で、上手に活用していくのが得策です。
ただ、生成AIに依存してしまうと自分の知性を育むことができません。自分の判断を大切にして、ツールとして生成AIを活用するのが重要です。
資産運用は生成AIに依存しない
投資や預金による資産運用では生成AIに依存するのはリスクが高いのでやめた方が良いでしょう。資産運用では生成AIによって何にいくら投資したら良いかを質問して答えてもらうこともできます。
しかし、生成AIの回答に対して提供会社が責任を持っているわけではありません。「この会社の株を買うべきだ」という回答が返ってきて投資したら、経営破綻になって株が紙切れになってしまうこともあり得ます。
日本では金融商品取引法によって投資助言が規制されています。誤ったアドバイスが消費者の生活を揺るがすリスクがあるからです。生成AIを投資アドバイスを受けるために使用しても今は問題ありませんが、自己責任なので依存せずに自分の判断で使うことが必要です。
関連記事ChatGPT・生成AIの開発・応用が進む現代の投資の視点
生活を大切にして安全な投資を心がける
投資によって資産を増やすのは人生100年時代になった現代では、老後の貯えを増やして豊かなシニアライフを送れるようにするために欠かせないでしょう。
ただ、生成AIに頼ってリスクの高い投資に積極的に資金を投じるのはハイリスクです。生成AIで気軽にアドバイスを受けてハイリスク・ハイリターンの投資をしやすくなったのは確かです。
しかし、投資商品そのものがもともと持っているリスクがなくなるわけではありません。生活を大切にしてリスクの低い投資を中心に資産運用をしていくのが堅実な方法です。
関連記事金が長期保有に適している理由とは
まとめ
生成AIの利用ガイドラインが策定されると消費者の資産運用や日常生活にも影響が生じる可能性があります。
年内にガイドラインができる予定で議論が進められているので、どのような内容だったとしても動じないように生成AIとの付き合い方を考えていきましょう。
生成AIに依存せずに、ツールとして活用するという考え方を持つと、文部科学省が提示しているガイドラインに合います。資産運用でも生成AIの回答通りに投資をするのではなく、リスクを理解した上で自分の判断でおこないましょう。
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