2023/08/04
SEC委員長によるAIのリスクの指摘を踏まえた安全な資産管理の方法
AIの登場によって金融がどう変わっていくかは大きな議論を巻き起こしています。米国証券取引委員会(SEC)委員長のゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)氏は2023年7月17日の講演で金融におけるAIのリスクにコメントしました。
AIの活用は世の中を便利にしているのは確かですが、金融業界では大きなリスクをはらんでいます。この記事ではSEC委員長によるAIリスクの指摘事項を踏まえて、今後の安全な資産管理に必要な考え方と適切な投資資産を紹介します。
目次
SEC委員長によって指摘されたAIのリスク
米国証券取引委員会(SEC)委員長のゲンスラー氏は2023年7月17日にワシントンのナショナル・プレス・クラブで金融におけるAIのリスクについて指摘しました。AIは金融システムの安定を損ない、脆弱性を高めるリスクがあるというのが大枠です。
現代ではAIは利便性を高める技術として急速に活用されている状況があります。なぜゲンスラー氏は金融安定に大きな影響があると考えているのでしょうか。
金融市場のボラティリティの増加
AIによって金融市場はボラティリティが増加するリスクがあります。AIによる予測に基づいて資産家が資産運用をしたら、同じ意思決定をして資産を動かすことになるリスクが高いからです。
金融に特化した類似のAIモデルを利用し、同じ金融データを用いて学習させたとしたら、アウトプットとして出てくる内容は同じような内容になります。人が分析して投資方法を考えるよりも、AIに任せた方が早くて正確という認識が広まると、大半の投資家がAIに依存して意思決定をするようになります。
すると、AIによって「この企業の株価が急騰する」という予測結果が出されたら、世界中の投資家が殺到して購入するでしょう。「米ドル円の為替レートが円高になる」という予測が出た時点で円買いが進みます。
金融市場は売買によって価格がコントロールされているので、集中的な買いや売りが起こるとボラティリティが高くなります。買われ過ぎ、売られ過ぎによって金融危機が起こるリスクもあるので管理しなければならないと言えます。
投資家よりも証券会社が利益を優先するAI最適化
AI搭載のサービスが証券会社からも提供されるようになりました。AIは最適化を目指して学習を進めています。投資家としてはAIによって成長していき、利益を増やせる金融サービスを利用できるのは魅力的でしょう。
ただ、証券会社は利益を得るために金融サービスを提供しています。AIも投資家の利益を最優先するアルゴリズムになっているとは限りません。
投資家の利益よりも証券会社の利益を優先するAI最適化もできます。そのアルゴリズムは企業秘密でブラックボックスなので、投資家は知ることができません。気付かないうちに金融詐欺をされる可能性があります。
特定商品への投資家の誘導
AIによって特定の金融商品に誘導が起こされるリスクがあります。AIベースのシステムと謳い投資家が信用する傾向が強まると、人為的な操作をする詐欺行為も起こる可能性があります。
特定の株式が上がるという予測を出して投資家に購入を促すこともAIと謳うだけでできるようになってしまいます。AIに長けている人材がいれば、同じモデルでも学習データの選別によって特定商品が上がるという予測結果を出せるようにすることも不可能ではありません。
このような誘導による金融市場の不正なコントロールが起こるリスクがあります。
フェイクニュースによる動揺
ゲンスラーSEC委員長は自身が生成AIによるテキストでフェイクの辞任ニュースが流れたことにも言及しました。生成AIによってインターネット上に広まっている噂や口コミから文章を作ることが簡単にできるようになっています。
AIによって自分自身のフェイクニュースが流れたことを受けて切実な問題と感じ、AIシステムにはプライバシーの侵害や利益相反のリスクがあることを指摘しています。フェイクニュースが次々に生成されたとしたら金融市場に限らず、さまざまな分野で動揺が起こって混乱が起きる可能性があるのは確かです。
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AI時代に安全な資産管理をする考え方
SEC委員長の指摘からAI時代の資産管理について何を考えるべきなのでしょうか。最も重要なのはAI時代にも安全な資産管理をできるようにすることです。
資産の安全を保ちつつ、増やせるようにするために必要な考え方を理解しておきましょう。
AIベースの金融サービスは安易に信用しない
AI搭載の金融サービスは資産が増えやすいと思い込みがちです。
しかし、実際には金融機関が利益を得るために最適化のアルゴリズムを作っているリスクもあります。他の投資家と同じ投資をしてボラティリティの高いハイリスク投資をすることになりかねません。
安易にAIベースの金融サービスを信用せずに、自分で投資を進めるのが大切です。
規制が整うまではAI活用は避ける
SEC委員長がAIのリスクに言及した本意は、AIについての規制が十分ではないことが問題だと指摘したかったからです。ゲンスラー氏はAIが人類にとっての機会ともコメントしています。
規制が整って安全に運用される世の中になったらAIを活用するリスクは低くなります。それまではAI活用にあえて手を出してリスクを取らないのが無難です。
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世界恐慌のリスクを考慮して安全資産を持つ
米国のSEC委員長がAIリスクを指摘したからといって、世界の投資家が納得してAI活用をやめるとは限りません。AIに頼る投資家が増えて一辺倒な投資が多くなり、世界恐慌になるリスクすらあります。
AIがもたらす金融危機を念頭に置いて、安全な資産を保有するように心がけるのが重要です。
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AIリスクがある中で適切な投資資産
生成AIなどのAIによる金融リスクがある中では安全な資産管理をしながら投資を進めるのが合理的でしょう。ここではAIが隆盛する現代における適切な投資資産を紹介します。
金地金などの貴金属
金融市場がAIによって大きく揺らぐ可能性を考えると、現物資産として価値が安定して伸びている貴金属は最も有力な候補です。
金は太古の昔から価値のある金属として世界中で認められてきました。金地金は貴金属の中でも最も信頼性が高い安全資産です。
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土地などの不動産
不動産も利用価値があることから安全性が比較的高い資産です。日本の都市圏では地価は上がり続けている場合がほとんどなので、土地を購入してずっと持ち続けていれば価値が上がるでしょう。
土地などの不動産は固定資産税がかかるのはデメリットですが、土地活用をして利益を生み出していけば税金負担を補えます。労力をかける覚悟があるなら土地を資産として持つのはおすすめです。
分散投資をしやすい投資信託
AIによって生まれる金融リスクを抑えるには分散投資が効果的です。AIによる予測結果を受けて取引がおこなわれ、特定の株式が大暴落したとしましょう。その株式だけに投資していたら大損をしてしまいます。
しかし、資産の5%しか持っていなかったとしたら、他の資産価値が上がっていると相殺されて全体としては投資利益を得られる可能性があります。
投資信託は分散投資をする方法として最も有名です。投資信託だけでもリスクは下がりますが、金地金や土地への投資も併せておこなうとさらに安全です。
まとめ
SEC委員長のゲンスラー氏はAIのリスクを切実に受け止め、金融の安定化のために規制の必要性があることを発信しました。生成AIは金融市場だけではなく、あらゆる業界に危機をもたらす可能性があります。
AIリスクがある中での投資は怖いかもしれませんが、安全性の高い投資を選べば問題ありません。金は安定した物的価値があるので、最もおすすめです。
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