2023/04/21
植田新総裁の新体制で日本の金融政策は変わるのか
黒田総裁から植田総裁の新体制になり、今後の日本の金融政策がどのように変化するかが大きな焦点になっています。
植田氏の所信聴取から月日が経ち、4月9日に日本銀行の総裁として就任しました。植田新総裁の就任後の記者会見ではどのような見解を示していたのでしょうか。
今後の金融政策の方向性について、黒田総裁の金融緩和を受けてどのような展開になると考えられるのかを見ていきましょう。
目次
所信聴取における植田氏の見解
黒田総裁下において後任として選ばれた植田氏は所信聴取で就任後の金融政策について言及していました。
まずは就任前の植田氏の見解と植田新体制の副総裁になった内田氏、氷見野氏の考え方について紹介します。
黒田体制の金融緩和の継続を肯定
植田氏は所信聴取では黒田総裁の金融緩和について継続が適切だと述べていました。物価安定の目標を達成するには必要かつ適切というのが見解で、今後も継続する方向性を示していました。
ただ、情報情勢に応じて工夫を凝らしながら継続することが適切だと述べていて、柔軟な対応策を考えていくことが示唆されています。
副総裁も所信聴取
植田氏に続いて副総裁として選ばれた内田氏、氷見野氏についても所信聴取で金融緩和について言及しています。内田氏も氷見野氏も金融緩和の継続を物価安定目標と関連付けて意見を述べていました。
基本的には2%の物価安定の実現には企業の賃上げが必要で、金融緩和の継続による後押しを続けるという見解です。
植田総裁による新体制が抱えている課題
黒田前総裁から引き継いだ植田総裁は黒田氏が進めてきた施策による課題を受けて、解決しなければならない状況に置かれています。
植田新総裁は就任後、どのような課題を近々に解決する必要があるのでしょうか。
黒田総裁下における金融緩和による副作用への対策
黒田元総裁の下で実施されてきたマイナス金利政策や12月の長期金利の変動幅の上限引き上げは「さまざまな副作用」を引き起こしたと植田総裁は言及しています。
マイナス金利政策の金融機関への影響や、イールドカーブコントロール(YCC)による市場機能への影響などは解決しなければならない課題です。
「長短金利操作」とも呼ばれ、長期金利と短期金利の誘導目標を操作して、イールドカーブを適切な水準に維持することを言います。目標達成のために必要なだけ国債の売買を行います。
特にYCCについては植田総裁の就任後に直ちに言及されるかどうかが市場関係者の間では話題になっていました。
2%の物価目標の達成
物価目標として掲げている2%の数値を達成するのも課題です。黒田総裁は就任当初に2年程度で達成すると唱えていましたが、実際には1%以下を推移していました。
しかし、2022年~2023年にかけて生鮮食品を除く消費者物価指数の上昇率は2%を越えています。
ただ、物価高は需要の増加による市場の原理で引き起こされたものではないというのが日銀の考え方です。
これを引き金にして今後、企業が収益を上げて賃上げの傾向が起こり、消費の増加につながるように金融政策でサポートしていくことが求められています。
植田新総裁の就任記者会見での見解
植田新体制ではトップ3が金融緩和の継続の考え方を持っていました。就任後、記者会見ではどのような見解を述べているのでしょうか。
結論としては、金融緩和の副作用への指摘に言及するのみで、具体策については触れられませんでした。ただ、黒田元総裁とは異なる視点のコメントをしているので確認しておきましょう。
YCCの継続には現状では肯定的
植田新総裁はYCCの継続については肯定するコメントをしています。YCCは市場機能への配慮をしながら進める必要がある点に言及しつつ、YCCは「経済にとって最も適切なイールドカーブの形成を実現する」と述べています。
そして、現行のYCCを継続するのが適当という見解を示しています。今までのYCCの影響や海外での利下げの影響を受けて「イールドカーブの形状はスムーズになっている」という言葉もあり、今後はメリット・副作用を比較して経済・物価・金融の状況に応じてYCCの修正も考えていく方針です。
基本的にはYCCを現状としては継続する考え方が強いものの、柔軟な対応の必要性も合わせて強調しています。
2%の物価目標の中長期目標として柔軟化
植田新総裁は2%の物価目標は短期間で達成できるものではないことを明言しました。特に金融緩和の効果がもう限界に来ている状況下での達成は容易ではないと述べています。
「現在の金融緩和が非常に強力なのは間違いない」とのコメントもあります。この発言からも金融緩和が物価目標の達成に重要な位置付けだと考えていることがわかるでしょう。
植田新総裁は「時期を区切って達成を目指すことはしない」、「長い目で点検や検証があっても良いと思う」と発言し、2%の物価目標を中長期目標として位置付けています。
植田新総裁は安定的かつ持続的に2%のインフレ率を実現することを目指すことにも言及しました。そのためには適切なタイミングで金融緩和を正常化させる必要があること、金融緩和が困難であれば副作用に配慮しながら持続的な緩和の仕組みを探ることを示しています。
植田新体制の影響を考えて対応すべきこと
植田新総裁の就任記者会見を受けて、今後の金融政策が変わるのかどうかについて市場はどのように反応しているのでしょうか。
市場の受け止め方を考慮して、今後の植田新体制の動きを考えて対応すべきことを考えてみましょう。
就任記者会見を受けた市場の反応
就任記者会見によって市場ではさまざまな意見が飛び交っています。金融政策については4月27日・28日に予定されている金融政策決定会合での決議が着目されている状況です。
野村総合研究所
野村総合研究所では「日本銀行が早期に金融緩和の枠組みの本格的な見直しを行う気配は感じられなかった」という見解を示しています。
みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏
みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏はYCC修正について「4月会合は現状維持でも、6月会合ないし7月会合での見直しはあり得る」と述べています。
三井住友DSアセットマネジメント
YCCの修正には踏み切らない可能性が高いという見解が目立ちますが、三井住友DSアセットマネジメントでは「日銀は4月にもYCCの修正を決定」と考えています。
東京新聞
東京新聞での黒田元総裁の「大規模金融緩和」の植田新体制における見直しとして、長期金利の上限の修正または撤廃、政策金利のゼロへの引き上げの可能性があると推察しています。
このように植田新総裁の発言を受けてまだ市場の見解も方向性が定まらない状況です。当面は金融政策の先行きが見えず、不安の中で柔軟な対応をする必要性が高いと言えるでしょう。
金融緩和政策の柔軟な変化への対応が必要
黒田体制下では金融緩和政策が徹底して進められてきましたが、植田新体制では柔軟な変化をしていく方向性が示唆されています。
金融緩和が継続されるのか、金融緩和の修正が実施されるかは読めない状況です。今後の資産運用では金融緩和政策の柔軟な変化に対応できるように対応することが重要でしょう。
金融政策は預金やローンの金利にも、企業の活動にも大きな影響を及ぼします。金融緩和か、金融引き締めに転じるのかがわからない状況では、安全性が高くて流動性もある資産を持つのが適切です。
資産を一つに固定せずにポートフォリオを考えて保有するようにするのも賢い対策でしょう。金融政策の柔軟化と任期内の金融緩和の修正が示唆されている植田新体制では、方向性が安定しない可能性があります。
当面は金融緩和が続くのを前提として考えつつ、金融政策に応じて臨機応変な対応ができる資産の持ち方を考えるのがおすすめです。
まとめ
黒田体制から植田新体制になって日本の金融政策が変わる可能性が出てきました。ただ、就任記者会見でも植田新総裁は具体的な金融政策については言及していません。
黒田体制の金融緩和政策を重視する見解を示していますが、YCCの修正やマイナス金利政策の変更などについて具体策が明示されていないのが現状です。
ただ、柔軟性のある対応をして経済のあるべき姿を目指す方向性は示されています。植田新体制では金融緩和を基軸としつつ、今後の経済の変化に応じた柔軟対応が進められていくでしょう。その都度、資産を動かして対応していくことが重要になります。
ルミゴールドのプール型金商品は流動性が高く、インフレにも強い性質があります。今後の植田体制で必要な柔軟な対応力を持つ資産として適していますのでぜひご活用ください。
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